2011年6月17日金曜日

はじめまして

憲法9条は,超有名なので,ここであらためて紹介する必要もないでしょうが,念のため。

第1項 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
第2項 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

第1項は,戦争放棄を定めた規定。第2項は,それを徹底して実現するために,日本はあらゆる目的・種類の戦力を保持しないことを宣言したのものです。第1次世界大戦と第2次世界大戦の間に生成・展開した平和思想・戦争違法化論を,第2次世界大戦の教訓を踏まえて発展させたもので、制定当時も現在でも世界で先進的な規定です。

これに対して、行政事件訴訟法9条は、ちょっとマイナーで、法律の専門家、なかでも行政訴訟を扱う法律家でなければ、ほとんど知ることはない条文です。このような条文です。とくに第2項が長いです。

第1項 処分の取消しの訴え及び裁決の取消しの訴え(以下「取消訴訟」という。)は、当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者(処分又は裁決の効果が期間の経過その他の理由によりなくなつた後においてもなお処分又は裁決の取消しによつて回復すべき法律上の利益を有する者を含む。)に限り、提起することができる。
第2項 裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。

この条文は、行政処分を裁判所に取り消してもらう訴訟を提起した場合に、その訴訟を提起した人はその訴訟を提起する資格を有していることが必要であることを求めているものです。簡単にいえば、裁判所を利用するのであれば、それなりの事情がなければいけませんよ,という趣旨です。たしかに、大した事情もないのに裁判しようというのは、裁判所も迷惑でしょうし、訴えられた国や地方公共団体も迷惑でしょう。そういうことは,どこの国でもある話です。
ただ、日本で問題なのは、そうした事情の有無の判断にあたって裁判所が訴訟を提起した人たちに非常に厳しかったということです。そこで、比較的最近に(2004年に)第2項を付け加える法律の改正が行われ、裁判所に対しもっと緩やかにそうした事情を判断してあげなさいという指示が国会からだされました。そういう規定はちょっと見当たりません。かなりユニークな存在です。

ということで、憲法9条は先進的な意味で世界的にユニーク,行政事件訴訟法9条は後進的な行政訴訟状況に照らして世界的にユニークなのです。
2つのユニークな条文が交差するとき、このブログがはじまる・・・